前回までの記事では、いい波に乗るために台風のことを知っておくというシリーズとして2つの記事を投稿しました。
1回目はそもそもの台風の定義のところから、台風の強さや大きさのカテゴリについて記載しています
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2回目は台風がどこで発生してどんなコースをたどるのかをメインとして、台風の発達のメカニズムまでの内容を記事にしてみました。
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今回は台風を知るためのシリーズ3回目として、台風の大きな被害の1つとなる「風」についてをテーマとして記事にしていきたいと思います。
台風への備えとしての知識として、また安全にサーフィンをするための知識としても、あらゆるサーファーの方には過去2回の記事含めて、台風のことをいろいろと知っておいてもらえればと思います。
台風の風について
通過方向と風向きの変化
台風が接近しているときに注意しなければならない事項は様々なものがありますが、その中でもまず挙げられるのが「風」についてではないでしょうか。
第1回目の記事にも記載したとおり、台風の強さのカテゴリ(強い、非常に強い、猛烈な)は、台風の中心付近の風の強さによって決まります。
天気図の中で台風をみると、同心円状に狭い間隔で等圧線が何重にも描かれており、台風周辺ではそれだけ強い風が吹いていることがわかると思います。
では、ある地点を基準として台風が接近して来る場合、台風の通過する進路によってどのように風向きが変化していくのか・・・?
その前に、台風の周辺で吹く風についてをおさらいしておくと、台風は低気圧の一種であることから中心に向けて反時計回りに風が吹き込みます。
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この中心に吹き込む風向きというのが台風の周辺で吹く風向きになるのですが、実際の台風周辺の風向きはこんな感じで吹いています。
2019年9月8日(日)17時 台風15号
これを見てもらえれば一目瞭然だとは思いますが、北半球の台風周辺ではそれぞれ以下の向きの風が卓越して吹いています
- 東側では南の風
- 北側では東の風
- 西側では北の風
- 南側では西の風
この風向きは台風のうねりの向きにも関係してくるため、よく覚えておいて欲しいところです。
よって、ある地点を基準としてその周辺を台風が通過した場合の風向変化はどうなるかは、以下のようになります。
ある地点の西側または北側を台風の中心が通過する場合
時計回りに風向きが変化「東→南→西」
ある地点の東側や南側を台風の中心が通過する場合
反時計回りに風向きが変化「東→北→西」
こちらの表現の方がしっくりくる方もいるかと思います。
自分が台風の進行方向より左側にいたら
反時計回りに風向きが変化「東→北→西」
自分が台風の進行方向より右側にいたら
時計回りに風向きが変化「東→南→西」
これだけ書くとあんまりイメージわかないかと思いますが、例えば千葉と湘南エリアとして考えてみますと、、、
以下は2018年の台風13号の経路図です。
この台風13号は南海上から関東地方へまっしぐらに指向してきましたが、房総半島沿岸部に沿うようにすれすれのコースを北へ進み三陸沖から東海上へ抜けていきました。
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このとき、千葉と湘南の東側を台風の中心が通過したので(千葉と湘南は台風の進行方向より左側にあるので)、
- 台風の接近前は、東の風
- 台風が東海上を通過中は、北東→北の風
- 台風が通過した後は、西→南西の風
といった感じで、反時計回りに風向が変化しました。
つまり、自分のいる位置から見て、
台風がどのあたりをどの方向へ通過していくのかという「予想進路」がわかれば、いつくらいにどの方向からの風が吹くのかがわかる
ということになります。
もちろん全ての場合がこの教科書的な風向変化をする訳ではありませんが、おおよそこのような風向の変化が見られるということだけでも知っておくと良いでしょう。
サーフィン観点としては、この風向の変化とうねりの向き&うねりの反応具合さえわかっていれば、いい波が割れているポイントを想定できるようになります。
危険半円と可航半円
台風と風については、危険半円と可航半円についても説明しておく必要があります。
台風の強さや風速の閾値については1回目の記事にて記載したとおりです。
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また、風速が25m/s以上の風が吹く範囲を暴風域、15m/s以上の風が吹く範囲を強風域ということも、2回目の記事にて記載しました。
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ところが同じ暴風域や強風域の中でも風の強さにはバラツキがあります。
台風が北上している場合には、昔から以下のことがよく知られています。
台風の進行方向の右側のほうが風がより強く、左側ではやや弱い
このことから、台風の進行方向の右側を 危険半円 、左側を 可航半円 と呼んでいます。
※注意
台風の左側は右側に比べるとやや弱いというだけで、風が弱くて安全という訳ではありません
これは台風の速度が影響しています。
また、台風の速度が早いほど右側と左側の風の強さに差ができてきます。
どういうことかと言いますと、
- 進行方向に向かって右の半円では、
台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くため風が強くなります。 - 逆に左の半円では、
台風自身の風が進行方向の風と逆になるので、右の半円に比べると風速が幾分小さくなるという訳です。
台風の進行速度が早ければ早いほど、右側と左側で風の強さに差がでてくることになることから、余計に右側の方が危険性が高まるということ
逆にいうと、台風の速度が遅い場合には右側と左側の危険性はあまりかわらないということです。
ここでも台風の進路に対しての自分のいる位置によって、危険な度合いが変わるということになります。
台風の進行方向に対して、自分のいる場所はどの位置にいることになりそうなのか?
台風が接近してきたときにはよく把握しておくとよいでしょう。
風速と風圧の威力
第1回目の記事にて、最大風速と瞬間最大風速について少し触れました。
日本においてのある時刻の風速というのは、その時刻の前10分間の平均風速を意味しているということ。
よって、瞬間的に吹く風は、この平均風速の1,5倍から2倍またはそれ以上の強さで吹くことがあるということです。
ですがこの風速が15m/sの強風域と言われてもあまりピンっとこないですよね?
台風情報で表現される風速は秒速なのですが、これを時速に変換するとリアリティ感が出てきます。
例えば、
強風域の閾値となる風速15m/sの風は時速に換算すると54km/hとなります。
54km/hというとすぐに思い浮かぶのは一般道における車の速さですね。
つまり、強風域の中にいるという状況は、一般道を走る車の上にいるときの風の感じ方と同じということです。
同じように
暴風域の閾値となる風速25m/sというのは時速にすると90km/hです。
今度は高速道路を走る車の上にいるのと同じ感じですね。
ものすごい風を感じることになることが容易に想定できます。
これに先ほどでてきた瞬間最大風速を考慮すると、
暴風域内では瞬間的に50m/s以上の風速が出る可能性があり時速にすると180km/h。
今度は新幹線の上にいるのと同じ状況となってきます。
どれだけ強い風になりそうなのかのイメージが少しできたかと思いますが、仮に高速道路を走る車の上や新幹線の上に立った状態だったとして、そこで感じるのは風速だけでなく風圧も考慮しなければなりません。
ここで重要なのは、
風圧は風速の2乗に比例して大きくなる
ということ。
風の強さが倍になれば、その時の風圧は4倍になるということです。
風速10m/sのときの1平方メートルにかかる圧力は5kg/㎡だそうです。
これが風速50m/sになったとすると、風速は5倍だけど風圧は25倍になる訳で、125kg/㎡の圧力がかかることになります。
125kgの人というとお相撲さんでもこれくらいの方はゴロゴロいますし、芸能人だとホンジャマカの石塚さんや伊集院光さんあたりをイメージしてもらえればよいかと。
そんな大きな人が上に乗っかっているのと同じ圧力を感じることになるということです。
逆にイメージが沸かなくなってしまったかもしれませんが・・・、
要はものすごい風圧を受けることになるため、前に歩くことは出来ず、吹き飛ばされる可能性もあるということです。
まとめ
今回は台風の風にフォーカスしていろいろと記載してきました。
毎回記載を繰り返していますが、ここに記載されている内容はあくまで平均的で教科書的な内容について記載をしていますが、ここ最近はここに記載のような平均的なものから逸脱する台風がゴロゴロ発生してきています。
また、この記事を書いている本日(2019/9/8)も、令和元年台風15号が関東地方を直撃する予想がでている状況であり、これから深夜にかけてどのような暴風が吹き荒れてしまうのかが非常に懸念されているところです。
台風接近や上陸が予想されている場合には、今回記載したように自分のいる場所が台風の進行方向から見てどの位置にあるのかを確認しておくと、どのような風向きになるのかも想定がつくようになり、場合によっては風向きによって台風への備えのやり方が変わってくることもあるかもしれません。
またサーファー観点においても、台風の位置によってざっくりとした風向きがわかれば、反応してくるうねりの向きがわかるようになり、オフショアとなるポイントがどこになるのかも想定できるようになります。
台風のうねりでいい波に乗るために、今回記載した内容を踏まえ、刻々と変化する最新の台風情報と合わせてうまく活用してもらえればと思います。また安全の観点でも今回記載した内容については是非知っておいてもらいたいです。
次回は、いよいよ台風の波について、いろいろ記載していきます。
以上、「いい波に乗るために〜台風のことを知っておく-その3- (台風の風向と風速)」でした。