サーファーが知っておきたい台風の知識-その5- (台風情報の活用)

サーファーと台風についてのKindle電子書籍
【Kindle】サーファーが知っておきたい台風の知識

サーファーが知っておきたい台風に関する知識シリーズ5回目です。
前回までの記事をざっとおさらいしておきますと
1回目はそもそもの台風の定義のところから、台風の強さや大きさのカテゴリについて記載しています
https://asasfsas24.com/20190709/wave-8409/
2回目は台風がどこで発生してどんなコースをたどるのかをメインとして、台風の発達のメカニズムまでの内容を記事にしてみました。
https://asasfsas24.com/20190805/wave-8852/
3回目は台風の風について、台風の移動に伴う風向の変化や、風速と風圧の威力について記載してきました
https://asasfsas24.com/20190908/wave-9619/
4回目は台風の波とうねりについて、台風による波のサイズと反応するタイミングの推定方法などを記載しました。
https://asasfsas24.com/20190920/wave-9682/
今回の5回目は、今までの内容を踏まえての台風情報の活用方法について記載していきます。
気象庁から発表される各種情報を安全や防災の観点およびサーフィンの観点から有効に活用していくための情報をまとめていきます。

台風情報の見方

台風はおそらくもっとも防災観点では関心が高く注目される気象現象であるかと思います。
地震は突然やってくるので警戒や注意のしようがないところがありますが、台風は事前に自分のいる地域に影響がありそうなのかが台風予想として,あらゆるメディアより情報が出てくるため、台風の接近前には多くの方々が台風情報に注目します。
普段何気なくニュースや天気予報で見ている台風情報も実はいろいろな要素があり、それぞれの要素の内容を知っているかいないかでも防災や安全の観点でも大きく異なってくることがあります
まずは基本となる気象庁の台風情報の見方から見ていきましょう

気象庁:台風情報

気象庁のホームページから台風情報をクリックすると以下のような画面が現れます。
台風情報
令和元年9月21日7時 気象庁 台風情報(https://www.jma.go.jp/jp/typh/)
こちらは、2019年9月20日の台風情報の表示画面です。
台風もしくは24時間以内に台風になると予想した熱帯低気圧が発生している場合は、上記のような台風の進路予想図が表示されます。
台風が複数発生している場合は、発生している台風が全て表示されます(左上の台風選択のドロップダウンリストから表示したい台風だけ表示させることもできます)
こちらは見慣れた画面になるのでどこに何が表示されているのかはすぐにわかると思います。
画面の右半分には、表示された台風の実況と予想のデータが表示されています。

台風の実況データ

ここにはどんな内容が表示されているのかを少し記載していきますと、
  • 大きさ
    台風に関する1回目の記事(https://asasfsas24.com/20190709/wave-8409/)にて記載したとおり、風速15m/s以上の強風域の半径により以下のようにカテゴリ分けされます。
    500km~800km 「大型の台風」: 800km以上 「超大型の台風
  • 強さ
    こちらも1回目の記事にて記載したとおり、中心付近の最大風速によって以下のようにカテゴリ分けされます。
    33m/s~44m/s未満「強い台風」:44m/s54m/s未満 非常に強い台風」:54m/s以上「猛烈な台風
  • 存在地域
    台風の中心がある地域が記載されます。
    海上の場合にはこの例のように「久米島の西南西約100㎞」という表現で記載され、上陸した場合は「〇〇市付近」という感じで記載されます。
  • 中心位置
    台風の中心位置の緯度・経度の情報です。
    台風の中心位置には3段階の精度があります「正確(Good)」約60km以下、「ほぼ正確(FAIR)」60〜110km、「不確実(POOR)」約110km以上
  • 進行方向、速さ
    台風の進む方向と速度(時速)がここに記載されます。
    時速10㎞未満の場合は「ゆっくり」として表現され、停滞している場合は進行方向は表示されません。
  • 中心気圧
    ドボラック法という方式で解析した中心気圧が記載されます
  • 中心付近の最大風速
    前10分間の平均風速の最大、m/sとkt(ノット)の2つの方法で表現されます
  • 最大瞬間風速
    最大風速の1.5倍から2倍の瞬間的に吹く風速、m/sとkt(ノット)の2つの方法で表現されます
    第3回の記事(https://asasfsas24.com/20190908/wave-9619/)でも解説しています
  • 25m/s以上の暴風域
    台風の中心から見た暴風域が存在する半径と方向、㎞とNMの2つの方法で表現されます。
    この例では台風中心からみて「東側の半径240㎞と西側の半径170㎞」のエリアが暴風域であることが表現されています。
    台風の進行方向の右側は台風の進行速度と風向きが同じ方向となるため、風が強くなる性質があります。
    北上する台風の場合には、進行方向右側となる東半円の方が強風域が大きいケースが多く、この例においても東側の半円のほうが暴風域が広く表現されているのがわかります。
  • 15m/s以上の強風域
    台風の中心から見た強風域が存在する半径と方向、㎞とNMの2つの方法で表現されます
    この例では台風中心から見て「全域で半径650km」のエリアに強風域があることが表現されています。

台風の進路予想図

台風情報のぺージの左半分にある進路予想図を拡大したものが以下になります。
台風進路図
2019年9月20日 22時 台風17号(気象庁HP https://www.jma.go.jp/jp/typh/1917l.htmlより引用)
  • 予報円
    白い点線で描かれた丸のこと、台風の中心が今後進んでいくと予想される範囲を予報時刻毎に示しています
    台風の中心が予報円に入る確率は70%です
  • 強風域
    風速が秒速15m以上の強風域は黄色の円で示されてます
  • 暴風域
    風速が秒速25m以上の暴風域は赤色の円で示されてます。
    今回の例とした挙げた台風17号は、この時点では暴風域はありませんでした。
  • 暴風警戒域
    台風の中心が予報円内に進んだときに、暴風域に入るおそれのある領域
    予報円を取り囲むかのように赤で描かれています。この赤枠内に入っていると暴風域圏内となる可能性があるということです。

 

予報円について

上記で示したとおり、台風の予想進路には予報円というものが使われており、台風の中心が予報円に入る確率は70として定義されています。

予報円は台風の中心が70%の確率で入るよう描かれる

つまり30%はこの予報円の中に入らない可能性があるということは認識しておきたいポイントです。

ここ最近はだいぶ予想の精度が向上されてきていますが、特に予報円が同じ方向にないような場合には予想が難しいところがあるため、コロコロと予想が変わることがしょっちゅうあります。

また予想時刻が先になればなるほど予報円が大きくなりますが、これも70%の確率という定義をもとに予報円の大きさが決められてくることから、予想時刻が先になるとそれだけブレ幅が大きくなります。
よって予報円の大きさも大きくなる訳です。

台風の勢力が大きくなるような捉え方をされることもありますが、予報円の大きさとは関係ありません。

また、予報円と次の予報円の距離が大きくなっているときは、それだけ台風の速度が早いことを意味します

日本付近まで北上してきた台風は偏西風にのりスピードをあげて列島を北東へ進むことがよくありますが、このように予想されるときには予報円の間隔が広くなります。

逆に予報円が重なるように描かれている場合は速度が非常に遅く複雑な動きをするケースが多くなることから、日本に近づいてきても予報円が重なっていたら影響が長期化する恐れがあり注意が必要となります。

台風情報の発表タイミング

台風情報(予報)は基本的には以下内容にて発表されます。

  • 台風の1日先(24時間)までの12時間刻みの予報を3時間ごとに発表
  • さらに5日先(120時間)までの24時間刻みの予報を6時間ごとに発表

 

また、台風が日本に接近し影響するおそれがある場合には、以下のようになります。

  • 台風の実況と1時間後の推定値を1時間ごとに発表
  • 24時間先までの3時間刻みの予報を3時間ごとに発表

 

実況と予報含めた台風情報をまとめると、以下の気象庁HP掲載の表のようになります。

気象HPより引用:台風情報の種類と表現方法
気象HPより引用:台風情報の種類と表現方法 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/7-1.html

台風の進路と速度

2回目の記事でも記載したとおり、夏から秋にかけて典型的なコースを通る台風についてを前提として記載しますと、、、

台風は南海上にある時には動きが遅く進行速度もゆっくりして時速では20kmを越えないものが多いですが、本州付近まで北上してくると上空の偏西風に乗り、進行方向を北東へ変えて一気にスピードを上げてくるパターンが多いです。

台風は本州に近づいてきて偏西風に乗ると一気にスピードアップする

この台風の特徴については覚えておいたほうがよく、天気予報を見てまだまだ遠くにあるから大丈夫と思っていても急に速度を上げて一気に近づいてくることがよくあります。

偏西風に乗った台風の速度は、はじめ時速30km〜40kmほどになり、北日本に近づく頃になると時速50km60kmくらいまでスピードを上げてくることもあります。

かなり遠くに台風があったとしても時速50kmで近づいているとなると、10時間で大阪から東京までは移動できるような速度になり、悠長にしている時間はないということになります。

しかも台風の直接の影響として考えたとしても、影響が出てくるのは台風の外側の雲がかかり始めるころです。天気予報で発表される台風の中心位置が近づいたら影響が出るという訳ではない、ということをよく認識しておきたいところです。

 

少し具体例を記載しますと、

例えば、関東地方から南へ1000km離れたところに台風の中心があったとします。
その台風の強風域は中心から全域で半径が500km、台風の速度が時速50kmだったとすると、

台風の影響が出始めるのは、台風の中心が接近してきてからではなく、このケースだと強風域の範囲に差し掛かった段階から影響がでてきます、

つまり台風情報で報じられる台風の中心位置だけを見ると影響でるのはまだまだ先かなと思ってしまいますが、実際は中心よりも台風をとりまく活発な雨雲や風による影響が早くから出てきます。

単純な計算ですが、このケースでは強風域が関東地方にかかるのは、500km÷50km/h=10時間後ということになります。

10時間といったら一晩寝たらもう外は強い風になっているかもしれないということであり、自分のいまいる場所への影響が出てくる時間をざっくりとでも計算できるようにしておくと、安全や防災の観点からも役立ちます。

台風までのざっくり距離計算

台風の位置は天気図上や日本付近の地図上に表示されることが多いのですが、このときに経度10度が約1,100kmだということを覚えておくとざっくり計算に役立ちます。

日本付近では 経度10度分 1,100km に相当する

経度130度から140度だとしてみると、ちょうど九州地方から関東地方までがすっぽり入るくらいが経度でいう10度分です。

どの地図や天気図でもこの130度と140度の経度線は描かれているので、この間の距離を目分量ででも測って、その長さを使って自分のいる位置から台風のある方向にむけて直線を引いて長さを測ってみると、かなりざっくりですが今いる位置から台風までの距離がわかります。

台風が自分のいる位置に向けて進んできているとした場合については、

台風と自分の位置との距離がわかれば、台風情報には強風域や暴風域の半径が記載されているので、強い風の影響に関しては、台風と自分との距離から強風域の半径を差し引いた距離を台風の時速で割れば、ざっくりと影響してくる時間がわかります。

強い雨雲が台風のどの辺にかかっているのかがわかれば、同じように計算して強い雨が降る時間帯もおおよそ計算できることになります。

この、おおよその影響時間を知っているだけでも、これからの台風への準備や対策、また自身の行動予定も先回りして考えることができるようになります。

接近、上陸と通過の定義

台風に関する用語に関しては、こちらの気象庁のHPに表形式で詳しく記載されています。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi2.html

ここでは、台風が日本へ近づいてきているときに使われる3つの表現についてだけ、かいつまんで説明したいと思います。

  • 台風の接近
    ある地点への台風の接近:台風の中心が、その地点から300km以内に入ること
    日本本土への接近と言う場合は、北海道・本州・四国・九州のいずれかへの接近を指す
  • 台風の上陸
    台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合を言う。
    上陸とは上記4つの海岸に達した場合のみに使われる言葉であるということだけ覚えておきましょう。
  • 台風の通過
    台風の中心が、小さい島や小さい半島を横切って、短時間で再び海上に出る場合を言う
    つまりこれら小さな島や半島を横切った場合には、上陸ではなく通過という扱いになります
    2019年9月に首都圏を直撃し千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号は三浦半島を「通過」しその後千葉市付近に「上陸」しました。

少しマニアックな内容となりますが、台風に関してはこのような用語がいろいろと定義されています。

台風による被害

大雨による被害

台風による被害でまず挙げられるのが大雨による被害ではないかと思います。

台風による大雨をざっくり分類すると、「台風本体の非常に発達した雨雲による大雨」と、「台風+前線による大雨」のパターンがあります。

「台風+前線」による大雨

梅雨前線や秋雨前線が日本付近に停滞しているところに南の海上から台風が北上してくる場合です。

台風が送りだす暖かく湿った南寄りの風が前線に吹き込むことにより前線の活動が活発化して、台風接近前より大雨になるケースがよく見られます。

この場合は台風がまだ近くになくても前線付近で災害が発生するレベルの大雨になることもあることから、天気図を見て「台風+前線」が描かれていたら大雨に注意が必要です。

前線による大雨のあとに台風本体が接近してくることによる大雨が続き、大雨となる時間が長期化して土砂災害の危険性が高まることがよくあります。

台風本体の非常に発達した雨雲による大雨

台風はその時々により本体のどのあたりで大雨となる雨雲があるのかが異なってきます。

こちらのレーダー画像は2019年台風15号が首都圏にかなり接近しているときのもので、ちょうど三浦半島を通過しているくらいの時間のものです。
台風の眼がはっきりとわかり、台風中心から北東~南西までの反時計回りに活発な雨雲があることがわかります。

台風レーダー画像
台風15号:令和元年9月9日1時30分  気象庁HPより引用

その後千葉市付近に上陸したときのレーダー画像がこちら。
眼は不明瞭となりましたが、台風中心付近では360度まんべんなく活発な雨雲に覆われていることがわかります。

台風15号レーダー画像
台風15号:令和元年9月9日5時5分

上記のとおり台風のそれぞれの性質や時間帯によっても活発な雨雲のある方角が異なりますが、中心から北東方向に活発な雨雲がある場合が多いという特徴もあることはあります。

また台風が南の海上から北上してくる場合には、台風より南東から南の風が日本付近に吹き込んで、南東~南の山の斜面では雨量が多くなる傾向があります

台風からの暖かく湿った空気が山の斜面に沿って上昇することにより、台風による上昇気流に山の斜面による強制上昇気流が加わることで雨雲が非常に発達します。

三重県にある尾鷲などはまさにそんな理由から、日本でも有数の雨の多い地域です。

また、大雨による被害で一番の記憶に残っているのは、平成23 台風12
紀伊半島に大水害をもたらした台風です。

平成23年 台風12号に関する気象庁の報告書
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/saigaiji/saigaiji_201103/saigaiji_201103.pdf

台風12号は、高知県東部に上陸して北上して瀬戸内海に入り、その後岡山県南部に再上陸して更に北上して日本海へ抜けていきました。

活発な雨雲を従えている状況で接近・上陸し、上陸前から時速15㎞というママチャリ並みの非常にゆっくりとした速度で北上したことから、大雨が同じような場所で長期化。

特に和歌山県の南東と南の斜面では非常に激しい雨が降り続き、総雨量が2,000mmとなった地域もでて、紀伊半島南部の各河川が氾濫し土砂災害も多発して甚大な被害が発生してしまいました。

私はこの時に大阪に住んでいたため、よくこの時の状況を記憶しています。
台風が四国の南から北上するコースとなりそうなときには、いつもこの平成23年台風12号のときのことを思い出します。

暴風による被害

台風の被害として暴風による被害も非常に恐ろしいものがあります。

大雨による土砂災害や河川の氾濫はどちらかというと山間部や都市部からは離れた地域で大きな被害が出やすい傾向があるかと思いますが、暴風に関しては都市部でも大きな被害が起こりやすく、都市機能を完全にマヒさせてしまう威力があります。

2018年と2019年の2年の間に、首都圏と関西圏の大都市に今まで経験したことのない暴風をもたらした台風が発生しました。

2018年 台風21号

関西に直撃し特に大阪に暴風による被害をもたらしたのが台風21号です。

関西圏の大都市にこれだけ暴風による被害をもたらしたのは、私の記憶にあるなかでもこの21号が最大の被害をもたらした台風になったのではないかと思います。

大阪を中心とした暴風による被害が発生、多くのニュースでも取り上げられましたがこの暴風により関空連絡橋にタンカーが衝突したり、住之江の駐車場では多くの車が暴風により横転してしまうなどの被害となりました。

暴風により空に屋根や瓦、看板などのさまざまなものが飛散。

電線はショートして火花を発し、この状況を目の当たりにした大都市に住む多くの方が台風の脅威と恐怖をはじめて実感したのではないかと思います。

2018年台風21号

9/4 3:00 ASAS / FSAS24台風21号は午前6時時点では足摺岬の南約160㎞にあり、北北東に35㎞/h(20KT)で進んでいる。中心付近の気圧は945hPa、中心付近の最大風速は45m/s、非常に強い勢力を維持して上[…]

2019年 台風15号

この記事を書いている2019年の時点では記憶に新しいですが、首都圏では今まで経験したことのない暴風が吹き荒れ、主に千葉県に甚大な被害をもたらした台風です。

強い勢力のまま関東地方に向けて北上してきた台風15号は相模湾から三浦半島を通過し、東京湾から千葉市付近に上陸しました。

このときの最大風速は秒速40m、千葉市では最大瞬間風速は4時28分に秒速57.5mの南東の風を記録。

瞬間最大風速は秒速60mを越える風が関東各地で吹くと予想されており、懸念されたとおり風速60m/sに近い値が観測。

この暴風にて、台風中心から右側に位置していた千葉県全域にて大きな被害が発生してしまいました。

市原市ではゴルフ場のネットが近隣家屋に向けて支柱とネットが倒れたり、君津市では東京電力の鉄塔が倒壊したことなどにより、2週間から1ヶ月近く停電や断水が広い地域で継続する事態に。

多くの家の瓦や屋根が吹き飛ばされ、ブルーシートと土嚢で屋根を覆う家がかなり多くなり、全国各地から災害復旧のため自衛隊の皆様が千葉県に集まり昼夜問わずの対応をされました。

台風が通過した日の首都圏の交通も大混乱、前日の時点からJRが計画運休を発表するなどになったことにより、駅には人が溢れ混乱は一日続きました。

2019年台風15号

気圧配置&天気と波情報 : 千葉で最大瞬間風速 57.5m/sを記録午前3時の実況天気図 ASAS台風15号は強い勢力を維持したまま午前8時には茨城県南部の行方市付近にあって、北東に時速25kmで進んでいます。[…]

高潮による被害

大雨や暴風と並んで台風による被害としては非常に大きなものになってしまうのが「高潮による被害です

ここ最近の台風では、大都市における高潮による甚大な被害は出ていないのではないかと思いますが、台風によって人命に大きな被害が出てしまうときの多くは、この高潮が発生しているという事実があります。

台風による被害で過去に一番の人命に対する被害が出てしまった「伊勢湾台風」のときの被害の原因のほとんどがこの高潮によるものだったということです。

大雨や暴風への対策と並んで、この高潮による対策についても忘れてはならないものだと思います。

台風による高潮の発生要因として、「吹き寄せ効果」と「吸い上げ効果」があります

気象予報士試験ではお馴染みのこのキーワードですが、以下に簡単に説明しておきます。

  • 吹き寄せ効果
    台風による強い風により海水が風下に吹き寄せられることで、主に湾の奥で海面が高くなる現象
     

    台風は南の海上から北上して接近することが多いため、台風接近時には沿岸部には南からの強い風により海水が吹き寄せられます。特に南に開いた湾の奥では吹き寄せられた海水の逃げ場がなくなり、高潮となって陸地に海水が押し寄せてきます。海面は風速の2乗に比例して高くなることが知られており、風速が2倍になれば海面は4倍高くなるということになります。

  • 吸い上げ効果

    台風の中心は気圧が極めて低いことから、海面が台風により吸い上げられる現象が発生します。
    これを吸い上げ効果といい、1hPaで1cm海面が上昇すると言われています。

    中心気圧が960hPaで沿岸部に近づいてきた場合は、通常時よりも40~50hPaも気圧が低いことから、40~50㎝も通常よりも海面が高くなるということになります。

台風によるこれら2つの効果により、高潮が発生する可能性が高まります。

また、台風接近の時間帯と満潮の時間帯が重なった時が特に警戒が必要で、太平洋側だと東京湾や大阪湾、伊勢湾、瀬戸内海など南に開いた湾の奥で高潮が発生する可能性が高まります。

また台風が日本海側を通過したときには、吹き返しの北風により、日本海側で北に開いた湾でも高潮の発生する可能性があり、台風のコースや強さなどにより発生する場所も異なるので、この点よく認識しておきたいところです。

過去に大きな高潮被害が発生したのが、伊勢湾台風です。

この時は台風接近時の潮位が4m近くまで上昇したという記録があり、伊勢湾のほとんどの堤防を越えて海岸から奥地のかなり広範囲まで浸水被害が発生したという記録があります。

この浸水という被害は非常に怖く、地下が発達している都市部に高潮が発生したとすると大変な被害が発生する可能性があります。

大量の海水が地下街へ流れ込み、水圧でドアが開かなくなって閉じ込められるなどの危険があるだけでなく、海水が腰あたりまであったとすると避難するのはほぼ不可能な状況にも陥ります。

一度発生すると海水が引くのにもかなりの時間を要することから、影響と被害範囲としてはこの高潮による被害が一番の被害規模になるかもしれなく、高潮による影響や被害についても忘れないでおきたいところです。

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海外の台風予想

日本への影響をもたらす台風情報としては気象庁からの情報が一番ではありますが、他の国や機関からも台風に関しては予想がだされています。

気象庁の台風予想は基本的には台風として解析された以降から台風予報が発表されますが、以下で紹介する他国の予想ではまだ熱帯低気圧の状態でも5日から10日先の予想が発表されるなど、気象庁の情報だけでは得られない情報も得ることができます。

ただ先の予想になればなるほど信頼度も低くなり進路予想などはかなりのブレが出てくることには留意が必要。

決して気象庁が同じ期間先までの予想が出来ないという訳ではなく、台風予報の発表に関する考え方の違いでありどちらがいいとかという訳ではありません。

予報精度はどのモデルがいいのかはイマイチよくわかりませんが、私のように毎日のように天気図をみている方は、気象庁の予報が出る前はJTWCやETMWFの予想を先行してチェックしている方が多いのではないかと思います。

先になればなるほど予想が難しく信頼度や予想進路の精度が落ちるということをよく認識した上で情報を活用し、台風情報は常に最新のものを見ることが必要です。

JTWC

Joint Typhoon Warning Center:アメリカ・ハワイの米軍合同台風警報センターが発表する台風情報です。

以前は気象好きな方しか見ることのなかったJTWCですが、ここ最近では気象会社からの情報でも使われて公表されるようになり、一般の方も直接JTWCのHPを観に行くなど、知名度が上がってきています。

気象庁と同じく5日先までの台風の予想進路を、気象庁よりも早い段階から見ることができます。

https://www.metoc.navy.mil/jtwc/jtwc.html

JTWC進路予想
JTWCホームページ(https://www.metoc.navy.mil/jtwc/jtwc.html)より引用

ECMWF

ヨーロッパ中期予報センター (ECMWF:European Centre for Medium-Range Weather Forecasts)による予想です。

Windy.comで表示される等圧線や風のデータは主にこのECMWFのモデルを使用しており(実際は他のモデルも選択可能)、ここ最近は知名度があがってきたような気がします。

一番の特徴は10日先までの各種予想がみれること。精度はともかくとして、この情報が見れるというのは非常に活用度が高いです。

https://www.ecmwf.int/en/forecasts/charts/catalogue/medium-mslp-wind850

AreaでEastern Asiaを選択すると日本付近が表示されます。
気圧配置図の下に10日先までに日付が表示されるので、そこで予想の日付を選択できます。

ECMWF台風予想
ヨーロッパ中期予報センター ホームページより引用 https://www.ecmwf.int/en/forecasts/charts/catalogue/medium-mslp-wind850

これら各国や機関で発表される予想はそれぞれ予想のアルゴリズムなどが異なることから、まだ先の予報となるとモデル毎の特徴がでたりして予想がそろわないことがおおいですが、台風が日本に接近してくるにつれて予想進路などのデータが揃ってくる傾向にあります。

気象庁の情報だけでは正直足りない部分がでてきていることから、これら海外の予報モデルも参考にしながら台風情報をうまく活用していくのがよいのではないかと思います。

まとめ:サーファーが知っておきたい台風の知識(台風情報の活用)

今回は主に台風情報に関しての内容を記載しました。

一口に台風情報と言っても様々な情報が気象庁から発表されており、その内容をよく理解しておくことで、防災や安全面においても役立てることができると思います。またサーファーの観点からも、うねりの到達時期や波の大きさなどを想定することや安全面においても役立てることができます。

今回記載した内容以外にもまだまだ台風情報として発表される内容は多いですが、ひとまず今回記載したあたりを把握しておいてもらえればという内容をまとめましたので、台風の関連で情報が必要になったときに、そういえばここのブログにこんなこと記載してあったなくらいで思い出してもらい、情報が多くの方に役立つことができればと思います。

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第1回からはじめたこのサーファーが知っておきたい台風の知識シリーズですが、いったんはここで終了にしたいと思います。

まだまだ書こうと思うと書きたい事柄はたくさんあるのですが、すこしマニアックになりすぎてしまうのと他にもまだまだ記載したいテーマがいっぱいあることから台風に関しては一区切りとします。

以上、「サーファーが知っておきたい台風の知識-その5- (台風情報の活用)」でした

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