気圧配置と天気図パターンによる波のコンディションを解説
前回のこのカテゴリでは、「高気圧からの吹き出し」と「アリューシャンからの北東うねり」による波のコンディションについて記載しました
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季節毎の特徴的な気圧配置のときにどのような風と波のコンディションになっていくのか。
今回は「梅雨の波」について解説していきます。
主に千葉と湘南エリアの観点からの記載となることだけご留意ください。
梅雨についての基礎知識
今回のテーマであるのは「梅雨」の波。
梅雨と聞いて知らないという方はいないと思います。日本には四季があり、春夏秋冬と季節は変わっていきますが、春と夏の間にある曇りや雨が続く時期が梅雨ですよね。
あんまり梅雨と聞いて、いい季節と感じる方は少ないと思います。
ずっと曇りや雨で湿気もあってジメジメするし、、、洗濯物は溜まる一方だし部屋干しにするとなんかしっとりするし・・・
でも四季の移り変わりの上において、自然のサイクル的にも梅雨の時期の雨があるからこそ成り立っているバランスもあり、梅雨の時期がなければ様々なところに影響が出てしまうというのも事実です。
では、そもそも「梅雨」ってなんでこんな曇りや雨が多いのか?
なぜ「梅雨」となるのか?
梅雨という時期があるのは常識となっていて、今更なんで梅雨があるのかなんていう疑問が起こることは、すでに大人となった週末サーファーの方にはないかと思います。
なので、そんなに興味はないことなのかもしれませんけど、今回のテーマであることから、そもそもなんでのところから解説していこうと思います。
~
そもそも「梅雨」とはどんな現象かといいますと、
5月上旬から7月下旬ころにかけての約2ヶ月の間、北海道を除いた日本列島各地域で見られる雨季のこと。
この雨季は日本だけでなく、朝鮮半島南部や中国まで同じような雨季となる現象が発生します。
日本に限っていうと、平年の梅雨入りと梅雨明けはおおよそ以下のタイミングです。
梅雨入り
5月の連休が終わったあたりからまず沖縄地方で梅雨入りします。そして少し経つと奄美地方も梅雨入り。
そこから2週間くらい経ってから次は九州南部が梅雨入りし、6月上旬には九州から関東までの広い範囲が順次梅雨入りしていきます。
そして6月中旬までには北陸から東北北部までの地域も梅雨入りへ。
気象の観点からでは、北海道と小笠原諸島には梅雨はないものとされており、気象庁もこれら地域の梅雨入り/梅雨明けは発表していません。
とはいえ、東北北部とそんなに距離も離れてない北海道もあり、梅雨らしい天気が続くこともあります。この北海道での梅雨を「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」と表現することがあります。
梅雨明け
おおよそ梅雨入りの順番のとおりに明けていきます。沖縄から奄美地方は6月下旬には早くも梅雨明け。
そして九州南部は7月中旬あたりに梅雨明けしてから、東北地方の梅雨明けは7月下旬頃。
~
気象庁のHPにも記載されていますが、梅雨は季節現象であり、その入り明けは、平均的に5日間程度の「移り変わり」の期間があります。
この日から急に梅雨になったという感じではなく、ある程度の期間を通して移り変わっていくものだということです。
梅雨入りに関して、天候の観点では曇りや雨が続くようになることであり、気圧配置としては梅雨前線が停滞するようになると、梅雨入りが発表されるようになります。
ここでやっとこのキーワードが出てきました。「梅雨前線」です。
この梅雨の主役と言ってもいい梅雨前線ですが、なぜ「梅雨」となるのか?の問いに対しては、この梅雨前線が日本付近に停滞するからということになります。
ではこの梅雨前線とはいったいどんなものなのでしょうか??
梅雨の主役「梅雨前線」について知っておく
まず前線について簡単におさらいしておきますと、前線には定義というものがあります。
どんな定義かといいますと・・・
性質の異なる空気が接するところにできる前線帯の暖気側の前線面とある高度面との交線
ちょっと表現が難しいですね、、、
こちらは気象学的な定義として記載したので難しい表現になっていますが、要は性質の異なる空気っていうのは暖かい空気と冷たい空気で、これがぶつかるところに出来るのが前線として捉えておけばよいでしょう。
地上付近で吹く風を考えてみると、北からの冷たい風と南からの暖かい風が地上付近でぶつかると、その風は行き場をなくして上空にあがるしかなくなります。
上空に空気が持ちあげられるということ=上昇気流が発生しているところに雲はできますので、広い範囲で風がぶつかるエリアがあるとそのぶつかるエリアには雲の帯ができるようになります。前線があるところは曇りや雨となりやすいのはこのためです。
そしてこの前線にもいろんなタイプがあって、ざっと記載するとこんな感じ。
温暖前線・・・暖かい空気のほうが優勢な前線
寒冷前線・・・冷たい空気のほうが優勢な前線
停滞前線・・・暖かい空気と冷たい空気が同じくらいの勢力の前線
閉塞前線・・・(説明しにくいので省略)
上記の中での梅雨前線は主に「停滞前線」にカテゴライズされます。
梅雨前線は南北の高気圧の”押し引き”
以前の記事でこんなタイトルの記事をつくりました
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梅雨前線についてはいろんな説明の仕方があり厳密に書くといろんな要素が出てきてややこしくなってしまうので、なるべく簡単に記載していきます。
この記事にも記載したのですが、梅雨前線は南海上にある太平洋高気圧とオホーツク海にあるオホーツク海高気圧との間に発生します。
先ほど書いた前線の定義を思い出してみましょう。
こちらの絵をみてもらうとわかるように、オホーツク海高気圧からの冷たく湿った風と、太平洋高気圧からの暖かく湿った風がちょうど日本付近でぶつかっており、そのぶつかるラインに梅雨前線が形成されているのがわかるかと思います。
まさに”性質の異なる空気”がぶつかるところに前線ができていますよね。
レーダー画像では前線付近で発生する雲によって強い雨が降っているところがあるのが見て取れます。
同じくらいの時刻の衛生画像はこんな感じ
梅雨前線はこの2つの南北の高気圧の力加減によって位置がきまります。つまり、
オホーツク海高気圧の勢力が強くなると梅雨前線は南へ下がり、太平洋高気圧の勢力が強くなると梅雨前線は北上する
この南北の高気圧の押し引きで、梅雨前線の位置がきまります。
そして梅雨前線の位置がきまると、自分がいる場所の位置関係によって風向きもだいたい決まってきます。
梅雨前線の北側にいると北よりの風、南側にいると南よりの風
実際は毎回こんなきっちり境界ができる訳ではなく、このとおりにならないこともあるのが実態ですけど、まあざっくりこんな感じで覚えておくとよいと思います。
そしてここで新たな疑問が生まれます。そもそもなんで南北の高気圧が現れるのか・・・
梅雨に関してなぜなぜと進めてきましたが、そもそもなところまできてしまいました。
南北の高気圧はなぜ発生するのか?
ちょっと記載していて深入りしてきた感じがして、本来の梅雨の波にたどり着かなくなってしまってますけど・・・ここまで来たら少し続けたいと思います。
太平洋高気圧
この高気圧は一年中太平洋にある高気圧なんですが、夏になると勢力が強まって日本付近に張り出してきます。
これはなんで発生するのかといいますと、そもそもの地球の大気の流れまでさかのぼってしまうので、簡単に記載しますが、、、
地球の大気の循環は以下のように3つの循環がありまして、南からハドレー循環、真ん中がフェレル循環、そして極循環です。
太平洋高気圧はどこにあるかというと、この図では真ん中にある 中緯度高圧帯 のところにあります。
何でこの辺りが高圧帯=高気圧の帯ができるのかといいますと、、、
赤道あたりでは太陽からの熱で空気が上昇しその上昇した空気は上空の高いところを北へと向かい、ある地点で下降します。
なんでこんな空気の流れになるのかは、詳しくは
ハドレー循環 をご確認いただくとして、要はこの
中緯度高圧帯では空気が下降するエリアであり、空気が下降するとなるとそこには高気圧が発生するということになるんですね。
なので、太平洋高気圧は地球の大気循環がつくりだした高気圧であり、安定的に存在する高気圧です。
太平洋高気圧は地球規模であるものなので、これはベースとしてあるものとして、注目なのはどちらかというとオホーツク海高気圧のほうです。
このオホーツク海高気圧があるがために、日本付近に梅雨前線が停滞することになります。
オホーツク海高気圧
オホーツク海高気圧の発生に起因するのは、上空の高い位置で北半球では西から東へと流れているジェット気流です。
このジェット気流は冬の間は北からの寒気によって日本列島より南側を吹いているのですが、だんだんと暖かくなってくるとこのジェット気流も南から北に位置をシフトしてきます。
そしてこの南から北に移動している最中にジェット気流が出会うのが、チベット高原です。
このチベット高原には多くの山脈があり、最も有名なのがヒマラヤ山脈。
梅雨の時期には、これら7000~8000m級の山脈があるエリアに、ジェット気流がぶつかります。
そしてこのジェット気流が山脈にぶつかると何が起こるのかというと、気流が山脈によって二手に分かれるんですね。
つまり山脈の北への流れと南への流れに分断されるということ。
そしてこの分断された2つの気流は、元の位置に戻ろうとして再び上空で合流するのです。
そしてこの合流するエリアが、なんとオホーツク海の上空なんです。
上空で二つの空気の流れがぶつかるということで、そのぶつかった空気はそのまま流れていくのもありますが、行き場をなくした空気の流れも出てきます。ジェット気流は高い位置にある流れであることからそれ以上高いところへ空気は流れず、行き場をなくした空気は下降気流となってオホーツク海上へと降りてきます。
下降気流があるということは、空気が上からどんどん降ってきて重くなる、つまり高気圧ができるということ。
そう、オホーツク海高気圧がここで誕生するという訳なんです。
以下、東京海上研究所さんのHPにわかりやすい絵がありましたので引用して掲載させていただきます。
そして更に季節が進むとジェット気流はチベット高原のあるエリアよりも北を流れることになり、オホーツク海高気圧は発生しなくなります。
オーソドックスな教科書的なパターンだと、太平洋高気圧の勢力が強まって梅雨前線を北へと押しやることで梅雨明けです。
ただその年によって梅雨明けのパターンは異なり、上記のような梅雨前線を押し上げて梅雨明けのパターンのほかに、明確に梅雨前線がなくならずにうやむやな梅雨明けのときもありますし、逆に梅雨前線が南へ南下しての梅雨明けというパターンもあります。
ですが、梅雨明けの説明としては、太平洋高気圧の勢力が強まって梅雨前線を北へノックダウンというパターンで理解しておけばよいでしょう。
~
これで、南北の高気圧が発生するところから梅雨前線の発生し梅雨明けまでの流れまで、ざっくりと理解することができたのではないかと思います。
ここまで記載するつもりなかったんですけど、、、書き出したら止まらなくなってしまいました。
やっと本題の「梅雨の波」に入ります。
梅雨の波の特徴とパターン
ここまでたどり着くまでにかなり消耗してしまいましたが、、、ここからが本題です。
梅雨の時期の波はどんな特徴があって、どんな時にいい波になるのか?
これについて解説していきます。
梅雨の波も気圧配置次第
よく梅雨の期間は波がないといいます。
たしかに梅雨の時期は波がない日が続くことが多いのは確かではないかと思います。
これはどの季節にも言えることですが、季節単位というかある期間で波があるかないかをざっくり表現するならば、「梅雨の時期は波がない」ということになるかと思いますが、梅雨の期間はずーっと波がない日が続く訳ではなく、そこはまさに気圧配置次第です。
梅雨の期間でもサイズアップするときもあれば、全然波がない日が続くときもあります。
このブログではいつも記載していることですが、今後の波がどうなるのかを考えるときには、必ずそれより以前の気圧配置と風と波の推移を見ることが重要です。
それでは梅雨の時期にどんなときに波があってどんなときに波がないのか・・・?
以下のよくあるパターン別に解説していきたいと思います
- 梅雨前線が南海上に停滞する場合
- 梅雨前線が北にあり南西の風が吹き続く場合
- 沿岸部に近い梅雨前線上を低気圧が通過する場合
南海上の台風からのうねりが反応する場合
梅雨前線が南海上に停滞する場合
まずは”波がない”といわれる所以の代表的なパターンから。
こちらは2019年6月19日の午後9時の予想天気図です。
南海上には梅雨前線が停滞し東西数千キロに横たわっている状況。
この天気図のように、本州から南に離れたところに梅雨前線が停滞しているときは波がないことが多い気圧配置です。
このケースの場合は梅雨前線が北緯30度あたりに停滞しており、前線の南側からの南西うねりは沿岸部には届かず、かといって前線の北側では波源がありません。梅雨前線上に低気圧がありますが、沿岸部からは離れた位置を通過するため、低気圧からの南うねりは前線の北側で吹く北風によりうねりは弱まって反応しません。
この翌日の20日の朝一の千葉エリアは北東から北西の弱い風、朝からスモールコンディションとなり千葉北では膝腿くらい、千葉南では膝腿から腰あるかどうかといったくらい。湘南はほぼフラットから鵠沼では膝たまに腿くらい。茨城から仙台にかけても腿腰くらいと波は小さめでした。
6月20日の記事
気圧配置&天気と波情報 : 全国的に波は小さめ午前3時の実況天気図 ASAS日本の南海上には梅雨前線が停滞していて、南西諸島から華中までのびています。前線上には低気圧があり、南側の海域では西南西の風が強く吹い[…]
また南海上に梅雨前線が停滞する場合、その更に南に台風があったとしても台風からの南うねりがなかなか反応しないことがあります。
いわゆる「前線ブロック」というヤツです。
前線の南側からの南うねりがあったとしても、前線の北側で吹く北よりの風によって南うねりが抑えられてしまい反応が鈍くなるという状況が発生します。
これは梅雨前線に限った話ではなく、その他の前線のときでも同じような状況になります。
以下は2018年6月10日のInstagramへの投稿です。
※このころはブログではなくInstagramへ毎日の気圧配置と波情報を投稿していました。本ブログへその内容は取り込んだつもりなんですけど、なぜか2018年6月分の投稿だけ取り込むこどができず、そのままにしています。
ここでも記載していますが、STSランクの台風が南大東島付近にあるにもかかわらず、西日本の南向きポイントである和歌山の磯ノ浦では膝腿くらいの弱い反応、伊勢の南張も腰くらいと大きなサイズアップになっていません。
当然、湘南にも台風からのうねりの反応はこの時点ではなく、翌日になってやっと腰腹くらいの反応が出てきた感じでした。
以下は翌日の6月11日の朝の投稿です。
これらに挙げた例のように、梅雨前線が南海上にあるときの特徴としては以下となります。
南海上に梅雨前線が停滞するときは波がない日が続く
沿岸から離れた梅雨前線上を低気圧が東進しても南うねりは反応しないことが多い
前線の南側に台風がある場合は、前線により南うねりが抑えられてしまう「前線ブロック」
波がない傾向となるパターンを覚えておいてもらえればと思います。
梅雨前線が北にあり南西の風が吹き続く場合
このケースは 波のあるとこないとこ/面のいいとこわるいとこ が二極化するケースです。
先ほどのケースは梅雨前線が少し離れた南海上に停滞する場合でしたが、ここでは逆に梅雨前線が北側にあるケース。
ちょうど以下のような気圧配置となり、太平洋側のポイントのほとんどで南西の風が吹き続くようになります。
南西の風が吹き続いた場合は、ポイントの向きにより以下のような傾向の波となります。
オンショアとなるポイントでは、まとまりなく荒れた波となるけどサイズアップ
オフショアとなるポイントは、波はまとまりつつもサイズは抑えられて物足りない波
南西の風が続くときのポイント選び
千葉エリアでは、南向きのポイントでオンショアとなるので、飯岡、御宿、鴨川、和田、平砂浦などがジャンク気味でサイズアップしてきます。一宮周辺や千歳、千倉では風をかわしてオフショアとなりつつ、サイズは抑えれる傾向です。
南西の風が強く続けばオンショアのポイントではサーフィンできるような波ではなくなってしまうので、波は抑えられるけど風をかわす一宮周辺や千歳、千倉からチェックするのが良いでしょう。茨城の鹿嶋も南西の風をかわすので候補にぜひいれておきたいところです。
南西の風が少し収まってきたのであれば、面はヨレてガタついてるかもしれないけどサイズのあるオンショアとなるポイントで入ったほうが楽しめる場合もあります。
この辺は程度問題なので、その日の状況とオンショアを気にするかしないかの好みによってもポイント選びが変わってくるので、自身の技量と好きなポイントなどで選べば良いと思います。
また梅雨前線が茨城県にかかっている場合、千葉エリアでは南西の風が強く吹いているけど、茨城のポイントでは風が弱いことがあります。
そんなときは鹿嶋では腰腹くらいで面がまとまったヘッドランド脇から遊べる波がブレイクしていることも多いので、梅雨前線の位置についても意識して茨城エリアも選択肢に入れておくとよいかと思います。
南の風が数日続くと水温が下がる「沿岸湧昇」
千葉や茨城の海に通う関東の週末サーファーなら良く知っていると思いますが、このエリアでは南よりの風が数日吹き続くと水温がかなり下がるときが多いです。
これは「沿岸湧昇」という現象で、要は日にあたっている暖かい海面が、強い風による流れで沖に行ってしまう現象です。
その沖へ行ってしまった暖かい海面の部分を補わなけれならないので、海の深いところにある水がその空いたスペースに流れこんできます。
深いところにある水なので当然太陽の光は届かずに冷たい水です。
この冷たい水が湧き上がってくるために、水温が一気に下がってしまうという訳です。
こちらの記事にもう少し内容を書いてますので、参考にしてもらえればと思います。
水温低下に関する記事
気圧配置&天気と波情報 : 週末はフルスーツをお忘れなく午前3時の実況天気図 ASASおはようございます。7月10日の金曜日の朝です。前線は日本海の沿岸を東北から対馬海峡まで斜めにまっすぐにのびており東シナ海には低気圧が[…]
沿岸部に近い梅雨前線上を低気圧が通過する場合
梅雨の時期でも サイズアップして波がよくなる可能性のあるケース です。
先ほどは沿岸部から南へ離れた位置に梅雨前線が停滞するケースを見てもらいましたが、梅雨前線の活動が活発になってくると前線は北上し本州付近に停滞することが多くなります。
こんな時は前線の微妙は位置の変化によって、雨の降り方や風の吹き方が大きく変わり予想が非常に難しい気圧配置となります。
沿岸部に近い位置に梅雨前線が停滞する場合には、前線上を低気圧が通過するタイミングを要チェックです。
梅雨前線上を低気圧が通過するタイミングは要チェック
低気圧が通過してサイズアップするパターンもいくつかあり、そのパターンによっても波の反応の仕方が異なってきます。
梅雨前線上を通過する低気圧の発達度合いと通過コースをよくチェックしておきましょう。
南西の波でサイズアップし通過後に波がまとまるパターン
梅雨前線が本州付近に停滞していて西から低気圧が東進してきているときは要チェックです。
前線の南側では太平洋高気圧から梅雨前線へ向けて吹き込む南西ベースの風が強く吹いています。
今回は前線が沿岸部付近にあることから、前線の南側でつくられた南西の風により沿岸部ではサイズアップ。
ただこの南西の風が強いときは、南向きのポイントではサイズアップしますけどオンショアによりジャンクな波となってしまいます。
そしてこの西から接近してくる低気圧が抜けたあとが狙い目のタイミングです。
ここで記載した例では、前線上の低気圧が東海上へと抜けていき、低気圧の後面に位置する関東地方では北西ベースの風が吹きました。
南向きのポイントでは、低気圧通過前までにオンショアでサイズアップした波が、低気圧通過後の北西からのオフショアとなって面が整ってきます。
この南西の波がサイズアップしたあとに整うパターンでは、千葉南エリアと湘南にはいい波が入ってきます。
千葉南エリアの南向きのポイントではいい波になることが多く、鴨川から千倉までの各ポイントでは北西~西北西の風が弱めに吹いてアベレージで胸肩サイズで面も整ったいい感じのコンディションとなりました。また平砂浦でも十分なサイズとなりいい波が入ってきてました。
湘南も腹胸くらいまでサイズアップして十分楽しめる波がブレイク。大きなサイズアップまでには至らなかったですけど、梅雨の時期としては十分にいい波となったタイミングでした。
一方で千葉北や茨城エリアでは南西からの波となると反応が鈍くなります。
これは千葉県の地形を見てもらえればわかるかと思いますが、ダイレクトに南西からの波は入りにくいため南西の波がまわりこんでのブレイクとなり、千葉南エリアの波よりもワンサイズは小さい波となることが多いです。
それでも腰腹サイズのブレイクはあり、楽しめるだけの波は十分ありました。
この日のコンディションはこちら
低気圧通過後の記事
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低気圧の北側で東うねりが反応するパターン
梅雨前線が沿岸から離れたところに停滞していたとしても、低気圧と梅雨前線の位置次第では東ベースの波が反応する場合もあります。
この日は紀伊半島の沖合の梅雨前線上に低気圧が発生し東へと移動しているところ。
低気圧が東へと移動しているときに、低気圧前面の北側では低気圧へと吹き込む東~北東の風が強まります。
この東ベースの風により千葉や茨城では東からの波がサイズアップ。
湘南は東ベースの波だと鵠沼や鎌倉エリアでは反応しにくいです。
そしてこのパターンも低気圧が通過した後には、北西ベースの風が千葉エリアには吹き込みます。
南西からの波が反応するパターンと同じく、オンショアによりサイズアップした波が、低気圧通過後の北西からのオフショアベースの風で面が整ってきていい波になるというパターンです。
千葉南エリアでは千歳から鴨川エリアまでこの日はチェックしましたが、胸肩~頭サイズのオフショアのいい波。
千葉北も一宮周辺や片貝周辺では頭サイズのセットで西からのオフショアとなりコンディションかなり良かったとのこと。
低気圧が通過したあとの、南房総 白渚ポイントではこんな波がブレイクしていました。
この日のコンディションはこちら
低気圧通過後の記事
気圧配置と波情報 : オフショアでまとまったいい波午前3時の実況天気図 ASASおはようございます。6月23日の火曜日です。梅雨前線上を低気圧が通過し低気圧の中心は茨城県の沖合から三陸奥へと移動していきそうな気圧配置[…]
この波の動画はこちらにも投稿していますのでご覧ください
南からの波でサイズアップするパターンと、東ベースの波でサイズアップするパターンの2つを紹介しました。
どちらも波の方向は違えど低気圧通過後のオフショアの波で面がまとまっていい波になるというパターンです。
これは梅雨前線上の低気圧に限った話ではなく、南岸低気圧が通過したときにあてはまるパターンです。
南岸低気圧が通過した後にオフショアでまとまる波を狙う
梅雨の時期でも西から低気圧が近づいてきたら、今回はどんなパターンになりそうなのかをチェックして予想してみましょう。
南海上の台風からのうねりが反応する場合
先ほど記載した「前線ブロック」のケースでは、台風が接近していたとしても梅雨前線によりうねりは抑えられてしまい、あまり反応しないケースを紹介しました。ここでは 梅雨の時期でも台風からのうねりが反応する ケースです。
南海上に台風がある場合は、梅雨前線を一気に日本海まで押し上げるケースや、日本付近で梅雨前線が途切れるような気圧配置になることもよくあります。
以下は2018年7月9日の台風8号が北上してきている日の天気図です。
台風は強さのカテゴリでいうと猛烈な台風まで発達、この台風の発達により太平洋高気圧の勢力が強まることで梅雨前線を日本海まで押し上げました。
こうなると台風と太平洋沿岸にはうねりを邪魔するものはなくなり、台風からのうねりが反応よく入ってきます。
先ほどの「前線ブロック」の時の台風の位置よりもかなり南にこの台風8号は位置していますが、それでも御前崎~伊良湖までは頭オーバーのクローズアウト、千葉エリアも胸肩~頭サイズの反応が出ていました。
その時々の台風の勢力などの違いはあれど、梅雨の時期でも台風からのグランドスウェルが入ってくる場合もあります。
梅雨の時期でも台風からのグランドスウェルが入る場合もある
まとめ:梅雨の波の特徴といい波になるパターン
今回はそもそもの梅雨というものの基礎知識から、梅雨の波の特徴と波のパターンについてを記事にしてみました。
前半部分は主に「梅雨」について
- 梅雨とはどんな現象なのか
- 梅雨前線はなぜ発生するのか
- 梅雨前線を作り出す高気圧はどのように形成されるのか
などについて記載してきました。
後半部分は「梅雨の波」について以下パターン別に特徴やポイント選びなどについて記載しました。
- 梅雨前線が南海上に停滞する場合
- 梅雨前線が北にあり南西の風が吹き続く場合
- 沿岸部に近い梅雨前線上を低気圧が通過する場合
南海上の台風からのうねりが反応する場合
ここではこんなよくあるパターンを記載してみましたけど、実際はその時々で状況は必ず異なり風の吹き方やうねりの反応もその時々で異なるのが普通です。
あくまでこれらはベースとなるパターンとして捉えていただき、これから発生する事象を考える際にはこれらパターンから応用して考えてもらえればよいのかなと思います。
また、専門的なことはなるべく記載を除外して週末サーファーの方々が理解しやすいような表現で書いたつもりですので、厳密な気象学的な表現や記載はしてないことだけご留意してもらえればと思います。
波がないといわれる梅雨の時期でも、毎日の気圧配置と風と波の推移を確認し、波のいいタイミングに合わせて海に入る行動力があれば、自分のレベルにあったいい波に乗れるチャンスが増えるのではないかと思います。
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